仁科記念賞の受賞にあたって

このたび『量子スピン系の数理的研究』の業績に対して押川正毅さんと共に 2025 年度仁科記念賞をいただくことになりました（第71回仁科記念賞・受賞者と業績）。私自身が重要だと信じて取り組んだ研究の成果を高く評価していただいたことを光栄に思います。物理学全般を対象とする賞において、物性基礎論・統計物理学という目立つことの少ない分野の、さらに少数派の数理物理学的な研究を明示的に顕彰していただいたことにも大きな意義があると考えております。（私のように、学位取得後は一貫して私立大学に所属して研究を進めた者が名誉ある賞の対象になったのも喜ばしいことです［注］。）審査委員の先生方をはじめとする賞にかかわられたみなさま、ご推薦くださった方、そして（共著こそないものの影響を与え合いながら未知の風景を目指して研究を進めてきた）共同受賞者の押川さんに深くお礼を申し上げます。また、研究者としての私を育ててくれた、エリオット・リーブ先生、原隆さん、高麗徹さんをはじめとする素晴らしい共同研究者のみなさんにも心から感謝いたします。

私の研究を支え応援してくださった人たち全てに深く感謝いたします。とくに、学校法人学習院・学習院大学が与えてくれた、個々の教員が、自ら重要だと考える活動に、誇りを持って全力で取り組める環境がなければ、私の教育者・研究者としての人生は異なったものになっていたでしょう。素晴らしい環境と幸運に感謝するとともに、そのような環境が末長く維持され、また、広がっていくことを切に望みます。

2025年11月4日
田崎晴明